kiroku

不確かなこと

うどん

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うどんの写真を初めて撮ったかも。

 

佐綾と千草(前回の:卒業 - kiroku)がうどんを食べに行く話書きました。時間が前後しますが、卒業式より前の話です。↓

 

 

 ある日気づいたことがある。

 私とマヤの組み合わせはよくあっても、私と佐綾でどこか出かけたことが今までにあっただろうか。学校で二人になることは勿論ある。遊びに行くとかご飯を食べに行くとか、何か目的をもってしたことは一度もないんじゃないかって、そう思った矢先だった。

「今度一緒にお昼食べに行こう」

 廊下を歩いていたら佐綾と会って、思い出したかのようにではなく、このことを伝えるために来たかのようにはっきりと食事に誘われた。どこに行こうかと尋ねたら珍しくもう決まっているらしい。

「うどんって、普通のうどんでいいの?」

「もちろん」

「佐綾はああいうところ行かないかと思ってた」

「わたしも普通のJKだよ」

 佐綾はマヤと出会ってから色々な言葉を使うようになった気がする。私たちは土曜日のお昼に、近くのイオンで待ち合わせることにした。

 

 昼時のフードコートはとても混んでいて、家族連れで溢れていた。特にうどん屋は安いし人気があるから大変だ。最後尾に並んだがいつお盆を取れるのだろうと前にいる人の数を数えていたら佐綾に「千草はやさしいと言われた。

 待っている間私たちは色々な話をした。

「佐綾はさ、マヤのどういうところが好きなの?」

「全部好きだよ。強いていうならわたしは少し意地が悪いからなかなかキスしないんだけど、ずっと待ってるからね、そのあたりとてもかわいいよ」

「なんだ、惚気か」

「千草が聞いてきたんだよ」

「そうだった」

 佐綾は普通の人は言うのが恥ずかしそうなことも平気で言うし、マヤのたまに外で出る好き好き攻撃(私はそう呼んでいる)にも真摯に答える。そういうところがなんだか爽やかでいいなと思う。

 他にもたくさん二人のエピソードを聞いた。マヤからもらった誕生ケーキの底が焦げていたけど頑張って食べた話、罰ゲームで人生初めて一人でピザ屋に行った話、マヤとゲームセンターで撮ったプリクラの数々。二人の未来はこれからも楽しいことだらけなんじゃないかと思った。

「あ、佐綾はうどん何にするか決めた?」

「わたしは釜揚げ」

「同じだ。すみません、釜揚げうどんの並を2つお願いします」

 

席について二人で「いただきます」と言ってから待ちに待ったうどんに箸を伸ばす。湯気がほくほくたつうどんを生姜とネギをたっぷり入れたつゆにつける。

「うん、おいしい」

「寒いときの釜揚げはサイコーだ」

「生姜はあればあるほど入れてしまうな。マヤともここ来たことある?」

「 いや、まだない」

「珍しいなー。真っ先に来そうだけど」

「マヤ曰くうどんは家で食べたいらしい。寒い日の夜にわたしの一人暮らし先で、鍋から食べるのがいいとのこと」 

「へー…。なんだかマヤらしいな」

「だからこの楽しみはとっておくことにしたんだ」

「そっか。…じゃあ、またうどん食べに行きたくなったら私と行こう」

「ありがとう。千草と出会えてよかった」

その後佐綾は黙々とうどんをすすった。私もつられてうどんをすすった。

 

 

 

うどん